測定事例

土器付着炭化物の14C年代測定による土器の編年

 青森県東津軽郡蟹田町の大平山元I遺跡の発掘が1998年7月に行われた際に,更新世の終わり頃のローム層から,旧石器の特徴を残す長者久保文化の石器と共に無文土器の破片が46点発見されました。これらの土器片から5点を選び,表面にわずかに付着していた炭化物を削り取って14C年代測定を行うと,これまでに得られている土器の年代のなかで,最も古い14C年代である12,680~13,780 [BP]が得られました。

 これまで,土器の年代は,土器片が発見された地層から採取された木炭片や植物片などの有機物について測定された14C年代から推測されてきました。しかし,土器と木炭片や植物片には直接の関係はありません。土器付着炭化物はごく少量しかえられないことがありますが,加速器質量分析法では年代測定が可能です。土器付着炭化物は土器を用いて食物を煮炊きした際の食物のオコゲですから,土器が使用された時に付着したものに間違いなく,土器の使用年代を確実に示します

 この土器付着炭化物の14C年代12,680~13,780 [BP]は,14C年代-暦年代較正曲線を用いて,実際の年代に換算すると15,320~16,540 [cal BP]と得られます。

 最古級の土器は,ロシア極東域,中国,日本で見つかっています。最古の土器がいつ,どこで,なぜ作り出されたかが注目されていますが,それらの土器の年代決定に,極微量の炭素で高精度の年代測定ができる加速器質量分析法が役立っています。また,青森県三内丸山遺跡の円筒土器を始めとして,さまざまな遺跡から出土した土器について,付着炭化物の14C年代測定から土器の正確な年代を決める,土器の高精度編年の研究が進められています。

青森県東津軽郡蟹田町の大平山元I遺跡で発掘された長者久保文化期の土器片

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