年代測定研究部の教員が行っている講義
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大学院講義

1. 地球年代論

授業の目的・ねらい

地殻の岩石は、約40億年にわたって、火成作用・変成作用・風化堆積作用を通し変化してきた。この地殻の歴史を理解するために、岩石の性状を把握するとともに、岩石の形成年代を知る。

授業内容

元素の安定同位体と放射性同位体及びその放射壊変の特徴を論じ、K-Ar法、Ar-Ar法、Rb-Srアイソクロン法、Sm-Ndアイソクロン法、U-Pb法などの伝統的な同位体年代測定法の原理を説明する。また、近年、実用化されたSHRIMPやCHIMEによるジルコンやモナザイトのサブグレイン年代測定法についても詳しく講義する。さらに、岩石の年代と産状・分布及び構成鉱物の化学組成と組織に基づいて地殻進化を概観し、ゴンドワナ大陸と日本列島を例にして大陸の離合集散と大陸縁辺部の造山運動を解説する。地球史を解読する各種放射年代測定の原理を解説し、最初の地殻形成プロセスや始生代・原生代の火成作用や変成作用の時空分布の特徴を講義する。

2. 地球環境進化論

授業の目的・ねらい

地球の海陸分布・山脈分布・気候等の自然環境は、地質時代を通して、大きく変化してきた。地球上の環境変化の時系列と生物進化の関わりを理解する。

授業内容

カンブリア紀以降の地質現象を用いて地球表層で生じた環境の変化と生物の進化について論じる。どのような時に生物は適応し、どのような時に絶滅するのかという点について、地質時代の環境変動と生物の進化の関係から考察し、自然と生物の関係について論じる。

3. 人類紀編年論

授業の目的・ねらい

炭素14年代測定法の原理と応用を解説し、考古試料や文化財の14C年代測定から明らかになった人類の活動史を講義する。

授業内容

①人類紀の年代測定法、②放射性炭素年代測定法 a. 原理、b. 応用、c. 編年の問題点、③人類紀の自然環境、④環境と動職物の相互作用、⑤環境と人間の相互作用、に関して講義をする。

4. 地球史学特論2

授業の目的・ねらい

地球を理解するには、現在の地球を探るだけは不十分であり、地球誕生から現在に至るまでの姿をとらえることが必要である。本授業では、全地球史における地球の内部構造および地球表層環境の進化について概観する。

授業内容

近年、地球史研究は、年代測定法の進化、種々の新しい化学分析法の出現や地質構造研究の進展などにより、大きく発展してきている。本講義では、放射性元素を用いた地球年代学的手法、局所分析等、最近の地球史研究の解説に重きをおいて、以下の項目に関して講義を行う。

  1. 地球年代学の基礎
  2. 太陽系のなかの地球、元素の起源、太陽系星雲、凝縮論、隕石
  3. 地球の進化、地球の層構造、コア形成、マントルの分化、大気・海洋の起源と進化
  4. 地球表層の環境変動、大陸移動、大陸衝突と造山運動
  5. 地球環境と生物の進化

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大学院セミナー

1. 地球年代学セミナ ーA

授業の目的・ねらい

放射性同位体を用いた各種の地質年代測定法の原理を理解し、同位体の測定値から地質年代が計算できるようにする。

授業内容

放射壊変の基本式から、K-Ar法、Ar-Ar法、Rb-Srアイソクロン法、Sm-Ndアイソクロン法、U-Pb法、Pb-Pb法の年代計算式を導き、パソコンでプログラミングする。さらに、文献に報告されている同位体測定値を用いて年代計算を行い、年代計算式とプログラムの適否をチェックする。また、鉱物中のAr, Sr, Pbなどの拡散定数を使って、岩石の冷却速度と鉱物粒径と拡散閉止温度の関係やアイソサーマル拡散における鉱物粒径と温度の関係を計算し、鉱物の示す同位体年代の地質学的意味を考察する。同位体比測定に基づくK-Ar、Ar-Ar、U-Pb、Pb-Pb、Rb-Sr、Sm-Nd法について、文献値を使って年代計算を行って原理を理解する。

2. 地球年代学セミナ ーB

授業の目的・ねらい

放射性核種を用いた各種の地質年代測定法の長短所を比較検討し、測定年代の地質学的解釈ができるようにする。

授業内容

文献の輪読を中心にして、K-Ar法とAr-Ar法の長短所の比較、Rb-Sr全岩アイソクロン法におけるSr同位体の不均質問題、Rb-Sr及びSm-Nd鉱物アイソクロン法における包有微細鉱物の影響、U-Pbジルコン法におけるコンコーダントとディスコーダント年代の意味づけ、SHRIMPやCHIMEによるサブグレイン年代測定の長短所を検討する。また、多様な方法で年代測定が実施されている世界各地の岩体を選んで、その測定方法ごとの年代値を比較するとともに、地質条件を理解して、それぞれの同位体年代の地質学的意味を解析する。

3. 地球年代学セミナ ーC

授業の目的・ねらい

野外地質調査から鉱物分離、年代測定、年代解釈までの一連の演習を行って、地質年代測定法と解析法を習得する。本セミナーは、地球年代学セミナーA及びBの応用として、地質年代測定と解析の総合的な習得と理解を図るものである。

授業内容

愛知県設楽地域の領家変成岩に三都橋花崗岩が貫入している場所を3日程度かけて地質調査し、変成岩と花崗岩の標本を採集する。採集標本を、①スタンプミルで粉末化し、②椀かけ法でモナザイトとジルコンを濃集し、③電磁分離器で精製する。次に、④鉱物粒子をスライドガラスにマウントして、⑤EPMA分析用の研磨薄片を作成した後、⑥炭素蒸着して、⑦CHIME年代を測定する。得られた変成岩と花崗岩のジルコン及びモナザイトのCHIME年代と野外の産状を総合して、調査した愛知県設楽地域の地質発達史を解析する。

4. 地球環境進化学セミナーA

授業の目的・ねらい

フィールドで観察される地質現象から地球環境の変化に関する情報をどのように読みとるかを理解して、その地質現象の年代測定について考察する。

授業内容

輪読と野外実習を中心にして、①フィールドワークで調査・観察した地質現象から環境変動の情報を抽出する、②得られた情報の年代を求める、③環境変動と生物の隔離の関係を理解する。

5. 地球環境進化学セミナーB

授業の目的・ねらい

地球の海陸分布・山脈分布を支配する造山運動を火成作用と変成作用の素過程から概観し、地球の表層環境の時代変化を理解する。

授業内容

輪読と野外実習を中心にして、①地殻を構成する火成岩の成因とテクトニックセッティングおよびマグマの発生・分化過程を考察する、②変成岩形成の温度・圧力条件を考察する、③造山帯(山脈)の隆起速度および隆起量を把握して、大規模な地形変化による生物の隔離と生物の適応を考察する。

6. 地球環境進化学セミナーC

授業の目的・ねらい

地球表層における岩石風化の素過程を理解し、土壌と生物進化の相互関係を考察する。

授業内容

野外観察と室内実験を中心にして、岩石風化生成物(粘土鉱物)をX線回折で同定し、風化過程における物質収支を理解し、さらに、土壌粘土鉱物の種類や陽イオン交換能と植生・微生物分布の関係を考察する。本セミナーでは、粘土鉱物のX線粉末回折・陽イオン交換など種同定の実験法の習得を合わせて行う。

7. 人類紀編年学セミナーA

授業の目的・ねらい

人類紀の編年に関する考古遺跡遺物や文化財科学関連試料の炭素14年代測定の応用例について、文献資料を輪読する。

8. 人類紀編年学セミナーB

授業の目的・ねらい

人類紀の編年に関する地質科学関連試料(海底・湖底堆積物、火山灰層など)の炭素14年代測定の応用例について、文献資料を輪読する。

授業内容

①海底・湖底堆積物の採取法、②海底・湖底堆積物の編年法、③海底・湖底堆積物を用いた環境変遷の解読、④火山噴火の編年とテフラ編年、⑤火山噴火と自然災害、に関連した学術論文、教科書、参考書等を輪読し理解を進める。

9. 人類紀編年学セミナーC

授業の目的・ねらい

実試料を用いて炭素14年代測定の流れを実習すると共に、炭素14年代測定法の発展の歴史や現状、さらに、炭素14年代の暦年代較正法を含めて炭素14年代の持つ理化学的な意味を習得する。

授業内容

14C年代測定の原理、②14C年代測定試料、③年代測定試料の前処理法、④ガラス細工の基礎、⑤真空ライン操作の基礎、⑥炭素同位体比の測定、⑦データ処理と統計、⑧14C年代の算出と意味づけ、等について説明や実習を行う。

10. 地球史学セミナー2A

授業の目的・ねらい

全地球史における地球の表層・内部構造の進化と表層環境の変遷について、特に地球化学的、年代学的な観点から書かれた最近の文献の輪読を中心に考察する。

授業内容

本セミナーでは、地球化学的、年代学的な観点から書かれたいくつかの地球史に関する論文を輪読し、地球史研究の最前線に触れる。具体的には、マントルの化学進化、地殻の形成と進化、大気海洋系の進化、地球環境と生物進化に関連した文献を輪読し、地球史に関する理解を深める予定である。

11. 地球史学セミナー2B

授業の目的・ねらい

近年、地球史研究は著しい年代測定技術の進歩により、大きく発展してきている。本セミナーでは、地球史研究の手段として現在用いられている各種の年代測定法についての原理と基礎、それらの応用例とともに、最前線の年代測定法について概説する。

授業内容

年代測定技術の発展とともに、個々の鉱物粒子といったような極微量試料の年代測定が可能になってきている。本セミナーでは、レーザー加熱による年代測定や二次イオン質量分析法(SIMS)による年代測定、高分解能イオンプローブ質量分析法(SHRIMP)、レーザー加熱・誘導プラズマ型質量分析法(ICP-MS)による局所分析に関する文献・教科書を輪読する。また、従来から高感度・高精度同位体分析に用いられる表面電離型質量分析法(TIMS)についても概説する。

12. 地球史学セミナー2C

授業の目的・ねらい

化石骨、隕石、堆積物などの試料に対して、加速器質量分析計や表面電離型質量分析計などによる年代測定、化学分析を行い、得られたデータから、試料の年代や古環境に関する情報を読み取る方法を習得する。

授業内容

輪読と分析実験を中心にして、与えられた研究テーマに対し、①文献による関連研究のリサーチ、②分析試料に対する最適な分析法の把握、③試料の年代測定・化学分析、④得られたデータの整理、⑤得られた結果に関する解釈、までの一連の流れを行い、習得する。

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