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測定事例

化石骨を直接年代測定する

従来,考古遺跡から発掘される古人骨や獣骨の14C年代測定を行うことは現実的ではないと考えられてきました。特に,年代がかなり古いとされるナウマン象やマンモス象の臼歯,切歯,骨などの試料については,氷浸けの状態で多量に出土するシベリアのマンモスの化石を除くと,ほとんど年代測定の例はなかったと言えます。しかし,1980年代になって,測定に必要な炭素試料が数ミリグラムと少量ですむ加速器質量分析法が実用化され,化石試料の直接測定が現実的なものとなりました。日本では,日本海山陰沖海底産の哺乳類化石や,野尻湖湖底堆積物層から採取されたナウマン象,オオツノシカなどの臼歯や切歯そのものについて,名古屋大学のタンデトロン加速器質量分析計による14C年代測定が行われました。

 1960年ころ愛媛県西宇和郡三崎町名取梶谷鼻沖で採取され,永く同地の資料館に保管されてたナウマン象臼歯化石について,タンデトロン加速器質量分析計を用いて14C年代測定を行った結果を紹介します。
年代測定には,臼歯に含まれるタンパク質(ゼラチンコラーゲン)を用いました。今回の測定では,タンデトロン加速器質量分析計2号機を用い,さらに臼歯資料の処理にアルカリ処理のステップを新たに取り入れた結果,43,670±440[BP](NUTA2-1678),43,880±450[BP](NUTA2-1679)(2回の独立な測定)と得られました。また,臼歯資料から,より根元的な有機物であるアミノ酸を抽出して測定した結果,43,870±[BP](NUTA-1681)とゼラチンコラーゲンとよくイッチする結果が得られました。このことから,臼歯の持ち主は最終氷期の中頃に生きていたナウマン象だと考えられます。

愛媛県西宇和郡三崎町名取梶谷鼻沖で採取されたナウマン象臼歯化石試料。
抽出したアミノ酸について 14C年代が43,870±450 [BP] (NUTA2-1681) と得られている。

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